家庭的な雰囲気の餃子の名店「餃子処 三日月」(後編)

家庭的な雰囲気の餃子の名店「餃子処 三日月」(後編)

餃子専門サイト「東京餃子通信」の編集長の塚田亮一です。
今回の「プロに学ぶ餃子を美味しく作る秘訣」は、前回に引き続き横浜日吉の「餃子処 三日月」樅田もみた文子さんと菅原恵子さんに美味しい餃子の作り方を教えていただきます。
前回は、三日月の餃子の味の5割を決めるという「皮の作り方」、そして餡づくりに必要な「食材」「味付け」について教えていただきました。
今回は、残りの2割の要素である「焼き」や、さらに発展させたアレンジ餃子餃子タレの作り方についてご紹介します。
「餃子処 三日月」樅田さん(左)と菅原さん(右)

パリッとした食感が長持ちする三日月流の「焼き」

焼き方は餃子の美味しさを決める重要な要素です。「うちの餃子の美味しさの2割は『焼き』で決まります。」と樅田さんは語ります。焼き方が進化したきっかけは、コロナ禍で焼き餃子のテイクアウト販売を始めたことでした。お客さんが家に帰るまでの間に、どうしても焼き目のパリッとした食感が失われてしまうという課題がありました。
樅田さんは、様々な試行錯誤の結果、水溶き米粉を使うことに辿り着きました。焼き面に水溶き米粉を付けてから餃子を焼くと、焼き面の食感が強くなり、かつ時間が経っても食感が損なわれないことが分かったのです。
サラダ油を引いて強火で熱した鉄なべに水溶き米粉を付けた餃子を並べて焼いていきます。焼き加減は目視で確認し、きれいな焼き色がついたら熱湯を投入して素早く蓋を閉めます。蓋から水滴が落ちて鉄板で蒸発する音を聞きながら、音がしなくなったら焼き上がりと判断するそうです。
取材の際にも撮影をしてしばらくしてから餃子を食べたところ、確かにパリッとした食感が残っており、驚くべき効果が実感できました。
水溶き米粉を使った三日月流の「焼き」
パリッとした食感の餃子

季節の食材などをトッピングにしたアレンジ餃子

季節の食材などを使ったアレンジ餃子の作り方を教えていただきました。餡に様々なトッピングをすることで、バリエーション豊富な餃子が楽しめるようになります。三日月では「季節の閉じ込め餃子」という名で旬の食材をトッピングした餃子を出していて、これが大変人気です。
春の季節には新ごぼうを使った餃子がおすすめです。新ごぼうを輪切りにし、一日天日干しにしたものを餡にたっぷりと混ぜ込むだけ。新ごぼうの優しい香りとシャキシャキとした食感がアクセントになります。私も大好きな餃子の一つです。夏にはオクラ、冬には柚子の皮(薄く切ったもの)が季節の閉じ込め餃子として登場していました。
「もちチーズ餃子」は、レギュラーメニューのアレンジ餃子として人気があります。さいの目に切ったお餅とチーズを使い、基本の餡の上にお餅とチーズを2片ずつのせて包むだけで完成します。樅田さん曰く「お餅とチーズはゴツゴツしていて少し包みづらいですが、餡の量を少なめにすると上手に包めます。」とのこと。
また、「青唐辛子餃子」も人気です。青唐辛子を輪切りにし餡の上にのせて包みます。辛味だけでなくフレッシュな香りや旨味が加わります。お店では、辛さ初級は青唐辛子を3片程度、超人レベルの辛さMAXでは青唐辛子をどっさりと包み込みます。辛いとはいえ激辛料理ではありませんので、辛い料理を食べ慣れている方であればMAXにも挑戦できるレベルの辛さです。

新ごぼうを使った「季節の閉じ込め餃子」
人気のアレンジ餃子「もちチーズ餃子」
輪切りにした青唐辛子を包んだ「青唐辛子餃子」

タレで広がる餃子の楽しみ方

ここまで餃子の皮や餡、焼き方、トッピングについて細かく教えてもらいました。最後にタレについてもお聞きしました。さっぱりと餃子の味を楽しむ場合は、お酢がおすすめとのこと。お酢は酸味だけでなく、旨味も加えてくれますし、焼いた際の余分な油もリセットしてくれます。また、ゆず七味唐辛子を辛味に使うことで、爽やかさが増します。
三日月では、「みぞれ水餃子」というタレを工夫したメニューも提供しています。これは水餃子に大根おろしと柚子胡椒をのせたもので、ポン酢しょうゆをかけて食べます。とてもさっぱりしていて、パクパクとたくさんの餃子が食べられてしまいます。お店のメニューでは出していないですが、焼き餃子で試しても美味しいタレです。
さらに、三日月では、醤油や生姜など9種類の調味料をブレンドして作る餃子専用の生ダレも用意しています。この複雑な香りのタレは、単なる餃子の味変ではなく、餃子自体の美味しさを引き上げる不思議なタレです。特別に生ダレの材料を教えていただいたので、最後にご紹介いたします。
お酢+ゆず七味唐辛子のタレとみぞれ水餃子

餃子専用生ダレの材料

●ねぎ ●醤油 ●おろしショウガ ●フライドオニオン ●フライドガーリック ●豆板醤 ●ごま油 ●酢 ●ごま
餃子専用生ダレ
前回の記事でもお伝えした通り、「餃子処 三日月」は2023年5月20日に閉店することが決まっております。三日月の餃子を食べたことがある方もない方も、ぜひ皆様のご家庭で三日月の味を再現して、気に入ったらこの味を継承してください。

店舗情報
●店名:餃子処 三日月

●所在地:〒2223-0062 神奈川県横浜市港北区日吉本町1-18-29
●営業時間17:00~22:00
●定休日:日曜日・月曜日
●電話番号:045-561-9059
●公式サイト http://gyoza-mikaduki.jp/
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塚田 亮一(「東京餃子通信」の編集長)
2010年開設の餃子専門ブログ「東京餃子通信」編集長。
「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも。首都圏はもとより、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。
これまで食べ歩いた餃子店の数は3,000店以上。
長年の研究からたどり着いた手作り餃子も評判。また、趣味のマラソンを活かし、餃子専門店を走って巡る「餃子マラニック」を主催。
作って、食べて、走れる、餃界のオールラウンダー。(「食べあるキング」より引用)