家庭的な雰囲気の餃子の名店「餃子処 三日月」(前編)

家庭的な雰囲気の餃子の名店「餃子処 三日月」(前編)

餃子専門サイト「東京餃子通信」の編集長の塚田亮一です。
今回の「プロに学ぶ餃子を美味しく作る秘訣」は、私の地元の行きつけの横浜日吉「餃子処 三日月」樅田もみた文子さんと菅原恵子さんに美味しい餃子の作り方を教えていただきます。
「餃子処 三日月」は、私が日吉に住み始めてから15年間通い続けている餃子専門店なのですが、実は2023年5月20日にお店を閉めることが決まっています。どうしてもこの味を残すために私自身も習得したいと思い、無理を言って今回の企画にご協力いただきました。

家庭的な雰囲気の町の餃子屋さん

2007年5月に樅田さんと菅原さんのお二人で「餃子処 三日月」をオープン。お二人が醸し出す家庭的な雰囲気と手間暇をかけた手作りの餃子の美味しさが人気となり、地元の日吉のみならず遠方にも多くの三日月ファンを抱えています。
三日月では焼餃子と水餃子で作り分けをした手作り皮で餡もニラ・ニンニクのありなしを選べ、さらに季節ごとの旬の食材と餡を一緒に包んだ季節の閉じ込め餃子など餃子のバラエティが豊富なのも魅力の一つです。
餃子作りを主に担当する樅田さんは中華料理店や餃子専門店などでの修行経験はないのですが、持ち前の探求心で、皮づくりから、食材選定、調理方法、味付けなど試行錯誤を重ねていて、三日月の餃子は日々進化を重ねています。「これがベストかなと思える餃子が作れるようになってきたのも最近なんです。」と樅田さん。
「餃子処 三日月」樅田さん(左)と菅原さん(右)
閉店のお知らせと手書きボート
「餃子処 三日月」の焼餃子

餃子の味の5割は皮で決まる

「うちの餃子の味の5割は皮で決まると思っています!」と皮の重要性を強調する樅田さん。使う材料は強力粉と水のみですが、焼餃子用と水餃子用の皮を作り分けています。
焼餃子用の皮のタネを作る際は、強力粉に熱湯を入れて捏ねます。大体の加水率は50%ぐらいですが、その日の気温などによっても変わるので微調整しているそうです。1週間分のタネを一気に作るので、混ぜる作業は餅つき機を使って捏ねます。しっかりと捏ねたタネは軽く伸ばしてから粗熱をとるためにしばらく寝かせます。
一方で水餃子については強力粉に水を足します。加水率も44%ぐらいと焼き餃子用よりも低め。寝かす時間も焼餃子よりは長めにとるそうです。加水率が低いと固くて捏ねるのが大変なのですが、ゆでても伸びにくく、つるっとした食感の皮に仕上がります。
焼餃子用も水餃子用の皮タネ作りでも共通しているのが、一旦冷凍するということ。樅田さんも正確なメカニズムは分かってはいないそうなのですが、以前の冷蔵でタネを寝かしていた方法に比べてタネを冷凍した方が餃子の皮が断然美味しくなったとのことです。
毎日その日に使う餃子の皮はその日の開店前に伸ばすというのも三日月のこだわりです。伸ばす際には6gくらいずつに丸くカットしたタネを均一に伸ばします。水餃子の皮はやや小さめに伸ばしてやや厚めの食感のしっかりした皮に仕上げています。

焼餃子用と水餃子用の皮
6gくらいずつに丸くカット
タネを均一に伸ばす

キングポークと天日干しの白菜・キャベツで作る餃子餡

皮以外の要素では「食材が2割、味付けが1割、残りの2割は焼き方。」だと樅田さんは言います。現在は野菜と肉の比率が5対5。一般的にはかなり豚肉比率が高めの印象を受けますね。三日月ではあるタイミングから茨城県産のもち豚「キングポーク」を使うようになって、その美味しさに感動し豚肉の比率を一気にあげたそうです。
野菜はキャベツと白菜を半々使っています。またキャベツと野菜は1~2日間天日干しにすることで甘味を凝縮させてから餃子に使うそうです。「以前は季節や産地によって味のばらつきがあったのですが、天日干しにするようになって野菜の風味が安定しました。」と樅田さん。野菜は機械を使って細かく切った後で「ベース」と呼んでいる三日月特製の合わせ調味料をかけてから水気を絞ります。手で絞るので適度に水分は残っている状態で肉餡と混ぜる形になります。
ベースの材料についても惜しげもなく教えていただきました。醤油にガラスープの素、豆鼓、味噌、オイスターソース、砂糖、胡椒をミキサーでよく混ぜれば完成。このベースは肉餡の味付けにも使っています。肉餡にはベースの他に、鶏ガラスープを肉餡1kgあたり300gとたっぷり練りこみます。さらに練りごまや生姜(ニラ・ニンニクあり餃子はニンニクも)追加。スープと練りごまを使うことで、ラードなどに頼らずにジューシーかつコクのある餃子が作れるそうです。最後に肉餡と野菜(ニラ・ニンニクあり餃子はニラも)を混ぜれば餡の完成です。
お店では開店前に餡までを仕込んでおき、注文がはいってから焼く直前に餃子を包みます。包み置きをすると、餡の水分で餃子の皮が柔らかくなってしまうそうです。これも重要なポイントですね。
天日干しの野菜とベース作り
肉餡/野菜が混ざった餡
餃子は注文が入ってから包んで焼きます
今回は三日月の皮と餃子餡の作り方を教えていただきました。次回は残り2割の要素である焼き方と餃子のタレ、アレンジ餃子などについて教えていただきます。

三日月餃子の主な材料

<皮>
●強力粉 ●熱湯(水餃子は水)
<餃子餡>
●豚肉(茨城県産もち豚「キングポーク」) ●キャベツ ●白菜 ●ニラ(ニラ・ニンニクあり餃子のみ) ●鶏ガラスープ ●練りごま ●生姜 ●ニンニク(ニラ・ニンニクあり餃子のみ)
<ベース(お肉の下味調味料)>
●醤油 ●ガラスープの素 ●豆鼓 ●味噌 ●オイスターソース ●砂糖 ●胡椒

店舗情報
●店名:餃子処 三日月

●所在地:〒2223-0062 神奈川県横浜市港北区日吉本町1-18-29
●営業時間17:00~22:00
●定休日:日曜日・月曜日
●電話番号:045-561-9059
●公式サイト http://gyoza-mikaduki.jp/
関連記事を読む

塚田 亮一(「東京餃子通信」の編集長)
2010年開設の餃子専門ブログ「東京餃子通信」編集長。
「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも。首都圏はもとより、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。
これまで食べ歩いた餃子店の数は3,000店以上。
長年の研究からたどり着いた手作り餃子も評判。また、趣味のマラソンを活かし、餃子専門店を走って巡る「餃子マラニック」を主催。
作って、食べて、走れる、餃界のオールラウンダー。(「食べあるキング」より引用)