台湾スタイルの手作り点心専門店「太郎厨房」(後編)

台湾スタイルの手作り点心専門店「太郎厨房」(後編)

餃子専門サイト「東京餃子通信」の編集長の塚田亮一です。
今回の「プロに学ぶ餃子を美味しく作る秘訣」は、前回に引き続き点心専門店「太郎厨房」店主の白井良太郎さんに、台湾スタイルの餃子の作り方を教えてもらいます。

ザクザク食感の「蔬菜(ヤサイ)餃子」の作り方

「台湾人って本当にキャベツをよく食べるんです。野菜炒めといえばキャベツが基本です。」と白井さん。そんなキャベツを好む台湾人から発想し誕生したのが餡の具材をほとんどキャベツで作った太郎厨房の蔬菜餃子です。
餡の具材はキャベツ10に対してニラ1、豚挽き肉2の割合。豚肉はコクと甘みを出すために脂身ベースの白い挽き肉のみを使います。
キャベツは食感を楽しめるように機械を使わずに手切り。芯に近い部分は細かく刻み、葉の部分は粗めに刻むことで、餡の食感の変化を楽しんでもらうことを狙っているそうです。この様な調整は機械では難しいとのことです。
キャベツは塩を振った後に絞り器を使って徹底的に水分を抜きます。こうすることで豚肉比率が低くてもキャベツがスープをよく吸収し、ジューシーに仕上がります。味付けは鶏ガラスープとだし醤油がベース。このだし醤油も椎茸や昆布、鰹節などを使ってとった自家製です。更に隠し味として香味野菜、オイスターソース、香辛料などを使って味に複雑さを出しているそうです。
前回ご紹介した翡翠(ニラ)餃子は甜醤油が味付けのベースでしたが蔬菜餃子では自家製だし醤油と味付けのベースから異なっている点にも白井さんの餃子づくりへのこだわりの強さを感じますね。
野菜餡を手作りの皮で包んで焼けば完成です。キャベツザクザクの食感に加えて、キャベツ中心とは思えぬジューシーさとコク、味の深さに驚かされます。ヘルシーなのにとても満足度の高い餃子に仕上がっていました。
ザクザク食感の蔬菜(ヤサイ)餃子

八方雲集で人気の「玉米鍋貼」を太郎厨房流にアップグレード

台湾には八方雲集という国内で1,000店舗近く展開している鍋貼(焼餃子)の大手チェーン店があり、そこの人気メニューの一つが玉米鍋貼というコーンを使った焼き餃子です。「台湾で定番のコーン餃子をもっと美味しくできないかと改良してみました。」と白井さん。
白井さんが作る玉米(コーン)餃子は皮からめちゃくちゃ手間をかけています。小麦を伸ばすのは水ではなくなんと自家製のコーンポタージュ。コーンの黄色がかったもっちり皮からはほんのりとコーンの甘い香りがします。
餡の具材は豚肉の赤身肉と脂身肉挽き肉。翡翠餃子と同様に食感を活かすために挽き方を変えたもの。この肉餡にコーンを足し、だし醤油や味噌、鶏ガラスープで味付けをします。太郎厨房流の玉米餃子の味の決め手はバターと胡椒。コーンとの相性を考えてバターの風味を足し、台湾の定番料理の黒胡椒炒めから発想を得て黒胡椒でピリッとした刺激を加えたそうです。コーンとバターと胡椒の組み合わせはラーメンのトッピングではよくありますが、餃子の餡では珍しい組み合わせですね。
日本ではあまり馴染みがない玉米餃子ですが、コーンの甘みと黒胡椒の刺激が豚肉餡の旨味を一層引き立てる、一度食べるとまた食べたくなる餃子でした。

玉米(コーン)鍋貼

香港と台湾の点心技術を融合させた蝦子(エビ)餃子

「台湾での修行時代に料理学校にも通っていたのですが、そこで香港のミュシュラン店の点心師から習ったエビのすり身を使った点心を餃子にアレンジしました。」と紹介してくれたのが蝦子(エビ)餃子です。
皮は白とオレンジ色の組み合わせになっていてオレンジ色の部分には人参のペーストが練り込まれた生地が使われています。
餡は蝦子餃子の名前通りでエビが主役。豚肉は一切使いません。エビのすり身に卵と白身魚のペーストとよく混ぜ、鶏油や塩、蜂蜜、塩、胡椒、ほんだしなどで下味を付けます。ここに大量のとびっことダイス状にカットしたエビの身を足して軽く混ぜれば餡の完成です。
海鮮類の美味しさがギュッとつまっていてとても美味しい餃子ですが、それ以上にふわふわ、ぷちぷち、ぷりぷりの三種類の食感が同時に楽しめる点が印象的な餃子でした。
蝦子(エビ)餃子
前回と今回の2回に渡って白井さんに太郎厨房流のこだわりの台湾餃子の作り方やテクニックを披露していただきました。私にとっては驚きと学びの連続の時間だったのですが、皆さんにも何かご家庭の餃子づくりに活かせそうな発見があれば幸いです。

店舗情報
●店名:手作り点心専門店
「太郎厨房」
●所在地:〒275-0002 千葉県習志野市実籾2-27−15
●営業時間:[木・金・土] 11:30~18:00
●電話番号:080-8042-7166
●通販サイト https://tarochubo.shop/
●Instagramページ https://www.instagram.com/taro_chubo/
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塚田 亮一(「東京餃子通信」の編集長)
2010年開設の餃子専門ブログ「東京餃子通信」編集長。
「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも。首都圏はもとより、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。
これまで食べ歩いた餃子店の数は3,000店以上。
長年の研究からたどり着いた手作り餃子も評判。また、趣味のマラソンを活かし、餃子専門店を走って巡る「餃子マラニック」を主催。
作って、食べて、走れる、餃界のオールラウンダー。(「食べあるキング」より引用)