台湾スタイルの手作り点心専門店「太郎厨房」(前編)

台湾スタイルの手作り点心専門店「太郎厨房」(前編)

餃子専門サイト「東京餃子通信」の編集長の塚田亮一です。
今回の「プロに学ぶ餃子を美味しく作る秘訣」は、台湾のミシュラン1つ星店での修行を経て点心専門店「太郎厨房」を開業された白井良太郎さんに、皮から作る台湾餃子の作り方を教えてもらいます。
日本や中国の餃子とは異なる台湾スタイルの餃子の魅力や、台湾老舗1つ星店仕込みの餃子作りのテクニックをお伝えしたいと思います。

台湾スタイルの手作り点心専門店「太郎厨房」

白井良太郎さんは高校卒業後、地元の中華料理店で料理の道に入り、台湾のミシュラン1つ星をとる老舗店で2年間の修行を経て、台湾料理の魅力を伝えるべく地元習志野で台湾スタイルの手作り点心専門店を「太郎厨房」を2021年10月に開業しました。
台湾の餃子の魅力をお聞きすると「台湾では水餃子であっても焼き餃子であっても、主食として食されることが多く、皮が食べごたえがあり非常に美味しいという特徴があります。また焼き餃子は現地では"ゴーティエ"と呼ばれ、朝食やランチに豆乳と一緒に食べたりします。逆にお酒のつまみとして焼き餃子を食べてるのはあまり見たことがありません。」と白井さん。同じ餃子でも食文化によって食べ方が異なるんですね。
太郎厨房では、台湾スタイルの皮にこだわった餃子を持ち帰りと通販中心での販売を行っています。通常メニューの台湾餃子は翡翠(ニラ)餃子、玉米(コーン)餃子、蝦子(エビ)餃子、蔬菜(ヤサイ)餃子の4種類。これらを焼き餃子と水餃子でそれぞれ展開。この全ての餃子の餡はそれぞれの具材に合わせて最適化された異なる味付けがされていて、更にはそれぞれ餃子専用の皮を作るというとてつもない手間暇をかけて作られています。白井さんが作るこの台湾餃子は全国各地の餃子フリークから高く評価され、創業から1年ちょっとではありますが注目の餃子として各種メディアなどにも取り上げられています。
太郎厨房の外装と白井良太郎さん
翡翠餃子、玉米餃子、蝦子餃子、蔬菜餃子

手作り皮のこね方、伸ばし方

台湾餃子の肝となるのが皮作り。皮には「春よ恋」というパンなどによく使われる香りの良い国産の強力小麦粉に少量の薄力粉を独自の比率でブレンドしたものを使っています。焼き餃子の皮の場合はこの小麦粉に塩と80℃程度まで温めたお湯を加水率50%程度で合わせ捏ねます。熱めのお湯で捏ねることで小麦のデンプンが糊化してパリッとした焼き上がりになりやすくなるそうです。「目安の温度や加水率はありますが、気温などで条件は毎日変わるので最終的には捏ねながら感覚で調整します。」と白井さん。最終的には職人の感覚が必要なのですね。
捏ねた生地はラップで包んで8時間ほど休ませます。伸ばす直前にもう一度捏ね、更に10分ほど休ませれば準備完了。ここから皮を伸ばしていきます。棒状に伸ばした生地を10~11g程度に切り分け、手のひらで押しつぶして丸い形状にして、たっぷりと打ち粉をまぶします。丸くした生地を麺棒を使って伸ばしていきます。麺棒を押すときに軽く力を入れ皮を回しながら薄く丸い皮に整えていきます。「皮の生地自体がよく伸びるので、麺棒で伸ばす際には正円にならなくても大丈夫です。包むときに形が整えられます。」とのことでした。
水餃子の皮も基本的な工程は同じでしたが、捏ねるときにお湯ではなく水を足す、加水率は焼き餃子よりもやや高め、生地を休ませる時間は丸一日、皮1枚の重さは14~15g、麺棒で丸く伸ばす際に皮の真ん中部分を厚めに残すなどのいくつかの細かく異なる点がありました。こうすることで焼き餃子よりもより存在感のある皮が出来上がります。
前述の通り、太郎厨房では餃子の種類によって皮を作り分けています。翡翠(ニラ)餃子の皮にはニラを、蝦子(エビ)餃子の皮には人参を、玉米(コーン)餃子の皮にはなんとコーンポタージュを練り込んで、色や風味の変化を付けているそうです。

太郎厨房の手作りの皮

太郎厨房の定番「翡翠(ニラ)餃子」の作り方

翡翠(ニラ)餃子の皮はふちの部分が緑色で中心部分が白色になるように作っています。この皮で作った水餃子はまるで白菜の様に見える可愛らしい姿をしています。緑色部分の生地にはニラを使って着色をします。ニラの柔らかい葉の部分だけをごま油で炒めて鮮やかな緑色になったところでミキサーを使ってペースト状にして生地に混ぜます。この緑色の生地で白い生地を包み込んでから棒状の飴の様に伸ばしてから皮を伸ばすとこの様な美しい皮ができます。皮を一枚作るのにもものすごい手間がかかっていますね。
餡の具材は豚肉とニラと生姜とかなりシンプルです。豚肉は赤身部分と脂身部分を別々に挽いてあとから絶妙のバランスで調合します。肉餡はあまり強く練り込まずに豚肉の食感を残すのもポイントなのだそうです。
餡の味付けのベースは甜醤油。甜醤油は中国料理や台湾料理ではよく使われる調味料で、醤油と砂糖、お酒を煮詰めて八角等の中華系の香辛料を足して作ります。もちろん太郎厨房では自家製の甜醤油を作っています。更に鶏ガラからとった白湯スープ、甜麺醤、蜂蜜、塩などで旨味や味の深みを調整しているそうです。
日本でもニラの香りを際立たせたパンチの強い餃子はありますが、翡翠(ニラ)餃子はそれらとは全く異なる深いしっかりとした味わいの餃子なので、誰もが一口食べただけでも驚くと思います。皮の風味や食感がしっかりとしているので、餡の風味もここまで強くしてもバランスが取れるのだと思います。
太郎厨房の定番「翡翠餃子」
今回ご紹介したテクニックの全てをご家庭で真似るのは難しいと思いますが、一部でも試してご家庭の餃子に台湾スタイルを取り込んでみてはいかがでしょうか?
次回は、玉米(コーン)餃子、蝦子(エビ)餃子、蔬菜(ヤサイ)餃子の作り方をご案内します。

店舗情報
●店名:手作り点心専門店
「太郎厨房」
●所在地:〒275-0002 千葉県習志野市実籾2-27−15
●営業時間:[木・金・土] 11:30~18:00
●電話番号:080-8042-7166
●通販サイト https://tarochubo.shop/
●Instagramページ https://www.instagram.com/taro_chubo/
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塚田 亮一(「東京餃子通信」の編集長)
2010年開設の餃子専門ブログ「東京餃子通信」編集長。
「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも。首都圏はもとより、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。
これまで食べ歩いた餃子店の数は3,000店以上。
長年の研究からたどり着いた手作り餃子も評判。また、趣味のマラソンを活かし、餃子専門店を走って巡る「餃子マラニック」を主催。
作って、食べて、走れる、餃界のオールラウンダー。(「食べあるキング」より引用)