福島といえば「円盤餃子」(福島市:上巻)

福島といえば「円盤餃子」(福島市:上巻)

東京餃子通信編集長の塚田です。今回の「塚田編集長の日本餃子巡礼」は、前回までの神戸に続いて東北地方から福島県の福島餃子をご紹介したいと思います。
  • 福島の円盤餃子
  • 福島の円盤餃子
 

福島といえば「円盤餃子」

全国各地に餃子の町として知られるところはありますが、中でも戦後から受け継がれてきた独自の餃子文化として知られているのが福島市です。福島市の餃子はフライパンいっぱいに餃子を丸く並べて焼き上げるのが特徴で「円盤餃子」と呼ばれています。福島駅周辺を中心に餃子専門店や居酒屋など餃子を提供するお店が点在し、夜になると円盤餃子を囲んでお酒を楽しむ人たちの姿が見られます。
福島の餃子文化は、戦後、旧満州から引き揚げてきた人々によってもたらされました。その原点とされるのが、1953年に創業した「満腹」。創業者の菅野かつゑさんは、満州で親しんだ餃子を福島でも作り始めました。一つのフライパンでたくさん焼けるよう、餃子を縁に沿って丸く並べ、焼き上がったところを大皿に返す。その姿が円盤のように見えたことから、のちに円盤餃子と呼ばれるようになりました。評判を聞いて作り方を教えてほしいと訪ねてくる人も現れ、かつゑさんは惜しみなくその技を伝えたといいます。このことも福島の街に餃子店が増えていった一因となりました。
  • 元祖円盤餃子 満腹
  • 元祖円盤餃子 満腹
ぎっしり並んだ餃子が圧巻!福島を代表する円盤餃子の名店「満腹」
2003年には餃子店の店主たちが「ふくしま餃子の会」を結成し、地域の名物として広く発信する活動を開始しました。東日本大震災から一年余り後の2012年には、直径1.5メートルの特注フライパンに1111個の餃子を並べ、一度に焼き上げるギネス世界記録への挑戦も行われました。更に2024年には、文化庁の「100年フード」にも認定されました。「満腹」から始まった円盤餃子は、いまや福島を代表する料理の一つとなっています。
  • 円盤餃子のギネス世界記録への挑戦
一度に焼き上げるギネス世界記録への挑戦!
 

手作りにこだわる福島餃子

福島餃子の特徴はなんといっても「円盤餃子」と呼ばれるその焼き方です。フライパンいっぱいに20個、30個と焼き上げられた餃子が、大皿いっぱいに並ぶ姿はかなりの迫力があります。当初、一人で食べ切るのは難しそうだと注文をためらっている私を横目に、地元の女性客が一人でぺろりと平らげている姿に驚かされました。実際には福島の餃子は野菜を多く使いニンニクも控えめな軽い餃子なので、気が付けば私も一皿をあっという間に平らげていました。
また、福島の餃子店を巡った際に気づいたのは、夕方から夜にかけて営業する店が多いことでした。これは、昭和の高度成長期に、労働者たちが仕事終わりに餃子店に立ち寄り、円盤餃子を肴に酒を飲んで、翌日への活力を養ったためだと言われています。円盤餃子はご飯のおかずとして食べるのではなく、ビールやお酒と一緒に味わうことに特化されているため、あの軽さが重要なのかもしれません。現在でも老舗の多くは夜営業が基本で、昼間に福島を訪れると、目当ての店がまだ暖簾を出していないことも珍しくありません。
もう一つの特徴が、皮を一枚ずつ手で延ばすことへのこだわりです。お店ごとに皮の延ばし方や厚さや大きさに店の個性と職人技が表れます。機械で均一に作り、広い地域へ届ける大量生産型の餃子とは、まさに対極にある存在です。このため市外へ支店を出す店はほとんどなく、冷凍餃子を取り寄せられる店も限られています。現地を訪れないと味わえないのも福島餃子の魅力の一つなのです。
  • 手作りにこだわる福島餃子
現地を訪れないと味わえないのも福島餃子の魅力!
 

温泉街に根付いたもう一つの餃子文化

福島駅から福島交通飯坂線に揺られること約二十分。終点の飯坂温泉駅で降りると、摺上川に沿って旅館が並び、細い路地の先には昔ながらの共同浴場が点在しています。飯坂温泉は、宮城県の秋保温泉、鳴子温泉と並んで「奥州三名湯と称される歴史ある温泉地」です。そして、この温泉街は、円盤餃子の名店が集まっていることでも知られています。
飯坂温泉で餃子が広まった背景には、高度成長期の温泉街の賑わいがありました。大型旅館が次々と建ち、多くの観光客や宴会客が訪れ、旅館で働く人たちも増えていきます。酒のつまみにも食事にもなり、大勢で分け合える餃子は、夜遅くまで人が行き交う温泉街にぴったりの料理でした。1953年創業の「照井」も、当初は居酒屋として始まりました。餃子が評判になると近隣の旅館から注文が入り、焼き上がった餃子をフライパンに載せたまま届けていたといいます。
現在の飯坂温泉では、共同浴場で熱い湯につかった後に、円盤餃子を囲んで冷たいビールを飲むという、この土地ならではの楽しみ方ができます。餃子専門店以外にも焼肉店や居酒屋、食堂などでも円盤餃子が出されています。福島駅周辺で育った円盤餃子とは別に、温泉街の夜や旅館文化と結びつきながら、飯坂にも独自の餃子文化が根づいてきました。福島で餃子を巡るなら、福島駅前だけで終わらせずに少し足をのばして温泉と餃子を楽しんでみるのもお勧めですよ。
是非、現地を訪れて、福島に行かなければ食べられない職人の技が詰まった円盤餃子を楽しんでみてください。
  • 飯坂温泉と円盤餃子
  • 飯坂温泉と円盤餃子
  • 飯坂温泉と円盤餃子
飯坂温泉を訪れたら味わいたい名物餃子!
 
下巻では、円盤餃子の名店を巡り、その皮や餡、焼き方の違いに触れることで、福島餃子の奥深さに迫ります。

  • 元祖円盤餃子 満腹
店舗情報
●店名:元祖円盤餃子 満腹
●所在地:〒960-8105 福島県福島市仲間町1-24
●電話番号:024-521-3787
●公式サイト:
https://manpuku.tkc.best-hp.jp/
 
  • 餃子 照井
店舗情報
●店名:餃子 照井
●所在地:〒960-0201 福島県福島市飯坂町錦町1-21
●電話番号:024-542-4447
●公式サイト:
https://www.gyouza-terui.com/

塚田 亮一(「東京餃子通信」の編集長)
2010年開設の餃子専門ブログ「東京餃子通信」編集長。
「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも。首都圏はもとより、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。
これまで食べ歩いた餃子店の数は3,000店以上。
長年の研究からたどり着いた手作り餃子も評判。また、趣味のマラソンを活かし、餃子専門店を走って巡る「餃子マラニック」を主催。
作って、食べて、走れる、餃界のオールラウンダー。(「食べあるキング」より引用)