旅先での料理の経験をシェアする「旅の食堂 ととら亭」(前編)
餃子専門サイト「東京餃子通信」の編集長の塚田亮一です。
今回の「プロに学ぶ餃子を美味しく作る秘訣」は、『世界まるごとギョーザの旅』の著者であり柴又で「旅の食堂 ととら亭」を営む久保えーじさん、智子さんご夫妻に、世界のギョーザについて教えていただきました。
久保えーじさん、智子さんご夫妻
旅先での料理の経験をシェアする「旅の食堂 ととら亭」
2010年創業の「旅の食堂 ととら亭」は、旅行好きでこれまで約90カ国を旅してきた久保えーじさん、智子さんご夫婦が旅先で出会った料理の経験を「旅のメニュー」としてシェアするというコンセプトのお店です。
お二人は年に何度か新しい料理を求めて世界各地に取材旅行に出かけています。えーじさんがプランナーとして旅の計画や料理の調査などの企画・調査を主に担当、シェフの智子さんが現地料理を再現しお店で提供するためのメニュー化を担当しています。「ととら亭」では、こうやって生まれた旅のメニューを数カ月ごとに旅のテーマを切り替えながら提供をしています。
「世界を旅する中で日本のギョーザの様な料理が各地にあることを知りました。」とえーじさん。お二人が世界のギョーザを追い求めて旅をする様子は『世界まるごとギョーザの旅』にも詳しく記されています。また「ととら亭」では、これまで何度か世界のギョーザ特集を開催し、各地のギョーザをそのまま再現した旅のメニューを提供しているため、餃子好きの中でも知る人ぞ知る存在となっています。
「旅の食堂 ととら亭」の外装と店内
店内でも販売されている『世界まるごとギョーザの旅』(かもめの本棚)
トルコの小さなギョーザ「マントゥ」
「ギョーザの旅を始めるきっかけとなったのがトルコで出会ったマントゥです。」と、えーじさんはトルコのギョーザについて教えてくれました。マントゥは、小さな水餃子の様なトルコの家庭料理です。特にカイセリという町のマントゥは小さいとのこと。「マントゥ作りが上手」というのは手先が器用で料理上手な証拠としてトルコでは定番の娘自慢のフレーズとして使われています。
小麦粉を練って薄く大きく伸ばした生地を、小さな正方形に切り分けて皮を作ります。餡は羊肉のみで、少量の餡を皮に乗せて指先でつまむ様にして包みます。茹で立てのマントゥをお皿に盛って、ニンニク風味のヨーグルトソースとオレンジ色のパプリカバターをたっぷりかけ、緑色のドライミントを振りかければ完成。スプーンをマントゥ一度に何個も乗せてソースを絡めて一気に食べます。羊肉の旨味と濃厚なソース、ミントの爽やかな香りが合わさることによって、一度食べるとクセになる味わいに仕上がっています。
えーじさんは「韓国のマンドゥや中央アジア各国でみられるマンティなど、中国の北宋時代のギョーザの呼び方であるマントゥから伝播したと考えられる名前の料理が点在していることに気づきました。」と世界のギョーザの名前でのつながりについて指摘します。どの様にして、ギョーザ風料理とその名前が広がっていったのかということも大変興味深いですね。
トルコのイメージとマントゥ
「旅の食堂 ととら亭」で提供されたマントゥ
スープに入った韓国のマンドゥククと韓国のイメージ
東欧のポテトギョーザ「ピロヒー」と「コルトゥナシ」
世界のギョーザには、日本のギョーザでは使わない様な具材を餡にするギョーザも色々とあるそうです。「東欧ではポテトを包むギョーザ風料理が、いくつか見つかりました。」とえーじさんが紹介してくれたのはスロバキアの家庭料理「ピロヒー」です。
ピロヒーは卵入りの薄力粉のやわらかめの生地でマッシュポテトとブリンゾベーというブルーチーズの様な風味の羊のチーズを包んでゆで上げたギョーザです。サイズはトルコのマントゥとは対照的に、かなり大きなサイズです。茹でたピロヒーは、バターソースとサワークリームをかけ、さらにベーコンの脂身のクルトンと一緒に食べるのがスロバキアスタイルです。とてもオイリーで食べ応えがあり、お腹にたまるギョーザですね。
スロバキアのイメージとピロヒー
「旅の食堂 ととら亭」で提供されたピロヒー
「モルドバではペリメニとコルトゥナシというギョーザを見つけました。現地では肉を使うギョーザをペリメニ、それ以外をコルトゥナシと呼んでいました。ととら亭では現地で食べたポテト入りのコルトゥナシを再現してみました。」と、えーじさんが新たなギョーザを紹介してくれました。
コルトゥナシは、現地のレストランでは前菜として位置づけられ、サイズもやや小ぶりです。小麦粉の生地でマッシュポテト(チーズも入れることもある)を包んで茹でるというシンプルな調理方法。ここにマッシュルームのクリームソースをかけて食べます。
「コルトゥナシは餡の具材や食べ方の自由度がかなり高く、現地ではフルーツのコンポートを包みジャムをつけて食べるタイプも見つけました。」とえーじさん。フルーツを使ったギョーザは、日本では馴染みが無いですが東欧ではモルドバをはじめいくつかの国で見つけたことがあるそうです。
モルドバのイメージとコルトゥナシ
「旅の食堂 ととら亭」で提供されたコルトゥナシとデザートイメージ
世界には様々なギョーザがあるのだということを、改めて知ることができました。次回も引き続き、ととら亭のお二人に世界のギョーザについて教えていただきます。
店舗情報
●店名:旅の食堂 ととら亭
●所在地〒125-0052 東京都葛飾区柴又4丁目8
●電話番号:03-6801-7003
●営業日時:こちらのリンクをご参考のうえお出掛けください
●公式サイト:https://totora.sakura.ne.jp/
●店名:旅の食堂 ととら亭
●所在地〒125-0052 東京都葛飾区柴又4丁目8
●電話番号:03-6801-7003
●営業日時:こちらのリンクをご参考のうえお出掛けください
●公式サイト:https://totora.sakura.ne.jp/
塚田 亮一(「東京餃子通信」の編集長)
2010年開設の餃子専門ブログ「東京餃子通信」編集長。
「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも。首都圏はもとより、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。
これまで食べ歩いた餃子店の数は3,000店以上。
長年の研究からたどり着いた手作り餃子も評判。また、趣味のマラソンを活かし、餃子専門店を走って巡る「餃子マラニック」を主催。
作って、食べて、走れる、餃界のオールラウンダー。(「食べあるキング」より引用)