食通たちを惹きつける手作り餃子の店「吉春」(後編)

食通たちを惹きつける手作り餃子の店「吉春」(後編)

餃子専門サイト「東京餃子通信」の編集長の塚田亮一です。
今回の「プロに学ぶ餃子を美味しく作る秘訣」は、前回に引き続き手作り餃子の店「吉春」の店主である吉村千恵子さんに、旬の野菜を使った3種類の水餃子の作り方を教えていただきました。
 

夏におすすめキュウリの水餃子

夏野菜の中から餃子におすすめの食材を尋ねたところ、「キュウリを使った餃子が人気です。」と吉村さんが教えてくれました。キュウリは確かに夏野菜を代表するような野菜ですが、餃子に使うというのは驚きです。
実際にキュウリの水餃子の作り方を見せていただきました。材料は、キュウリ、卵、キクラゲ。肉類や海鮮類は使いません。キュウリはスライサーで細切りにしてから塩もみし、水分を少し抜きます。キクラゲも細切りにし、卵は炒り卵にしてから冷まします。これらを混ぜて塩、コショウ、ごま油で味付けします。実にシンプルな作り方ですね。「餡に粘り気がないので包むのは難しいです。」と語る吉村さんですが、見事な手さばきで手延べの皮を伸ばしながらキュウリ餡を包み込んでいきます。
茹で上がったキュウリの水餃子は、皮からキュウリの緑色や卵の黄色が少しだけ透けて見えて、とてもキレイです。何もつけずにそのまま食べると、キュウリのみずみずしさとシャキシャキとした食感が印象的です。さっぱりしていて、まさに夏に食べたくなる餃子ですね。キュウリがこんなにも餃子に合うとは、大変驚きました。
  • 夏におすすめキュウリの水餃子
キュウリの水餃子の餡と包み
  • 夏におすすめキュウリの水餃子
夏におすすめキュウリの水餃子


 


苦みがクセになるピーマンの水餃子

もう一つお勧めの夏野菜を教えてほしいとお願いしたところ、提案されたのがピーマンでした。日本ではピーマンを餃子に入れることは珍しいですが、吉村さんによると中国ではピーマンは餃子の食材としてかなりポピュラーなのだそうです。
ピーマン餃子の材料は、ピーマンと豚肉がメイン食材です。ピーマンは手間をかけて包丁で細かく刻みます。その理由を聞くと、「ミキサーで刻むと繊維が壊れて粘り気が出て、独特の食感が損なわれてしまうんです。」と吉村さん。ピーマンと豚肉を混ぜ、おろし生姜と刻みネギを足し、醤油、オイスターソース、ごま油などで味付けします。前回紹介したキュウリ餃子で使う調味料と同じですが、ピーマンに合わせるために配合は変えているとのことです。
ピーマンの餃子を頬張ると、口の中で豚肉の脂の甘味とピーマンのほのかな苦みが一体化します。苦みによって味に深みが出ているのが分かります。一方で、ピーマン独特の青臭さはほとんど感じませんでした。ピーマンは風味が強いので焼き餃子にしてもピーマンの良さが残るそうです。水餃子と焼き餃子での味の変化を比べてみるのも面白そうですね。
  • 苦みがクセになるピーマンの水餃子
ピーマンの水餃子の餡と包み
  • 苦みがクセになるピーマンの水餃子
苦みがクセになるピーマンの水餃子
 

旨味の相乗効果、ビーツの漬物の水餃子

野菜餃子の楽しみ方の一つとして漬物を活用するという方法があるということを吉村さんに紹介いただきました。寒冷地域である中国の東北地方では野菜が採れる季節が限られるため、保存食として野菜を漬けることが一般的で、これを餃子を始めとして様々な料理に使うそうです。
今回紹介してもらった漬物は黄ビーツの漬物です。ビーツというと赤のイメージが強いですが、黄ビーツは赤ビーツよりも甘味があります。またビーツにはミネラルやビタミン、食物繊維などの栄養素が豊富で健康に良い食材ともされています。
この黄ビーツを千切りにして瓶に入れ、塩水に漬けて常温で置いておくと乳酸発酵し漬物になります。漬物にした黄ビーツと牛肉と豚肉の合い挽き肉がビーツ餃子の主な食材です。餡の風味付けには五香粉という中国の代表的なミックススパイスとおろし生姜、刻みネギを使います。
ビーツ餃子はビーツのシャキシャキ食感が印象的です。また、発酵したビーツの旨味と肉の旨味の相乗効果に加えて五香粉が良いアクセントになっていて、非常にインパクトの強い餃子に仕上がっていました。
  • 旨味の相乗効果、ビーツの漬物の水餃子
ビーツの漬物と餡
  • 旨味の相乗効果、ビーツの漬物の水餃子
インパクトの強いビーツの漬物の水餃子
今回は、野菜選びとその野菜と相性の良い具材の組み合わせで、餃子作りの幅がこんなにも広がるということが実感できました。
皆さんも、旬の野菜を使ってオリジナルの餃子作りに挑戦してみてはいかがでしょうか?
 

  • 手作り餃子の店「吉春」
店舗情報
●店名:手作り餃子の店「吉春」

●所在地:〒182-0022 東京都調布市国領町8-1-14
●営業時間:17:00 - 22:00
●定休日:火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日が休み)
●電話番号:042-426-8153
●公式サイト 手作り餃子の店「吉春」公式サイト
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  • 塚田 亮一(「東京餃子通信」の編集長)
    2010年開設の餃子専門ブログ「東京餃子通信」編集長。
    「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも。首都圏はもとより、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。
    これまで食べ歩いた餃子店の数は3,000店以上。
    長年の研究からたどり着いた手作り餃子も評判。また、趣味のマラソンを活かし、餃子専門店を走って巡る「餃子マラニック」を主催。
    作って、食べて、走れる、餃界のオールラウンダー。(「食べあるキング」より引用)