ご当地餃子について

ご当地餃子について

2018年から続けている本餃子コラムも今月で3年目に突入しました。
今月からは新企画ということで読者の皆さんから頂いたテーマや質問にお応えする形で餃子コラムを展開していきたいと考えています。
今回は「自宅で再現できるご当地餃子はありますか?」という質問をいただきました。
ご当地餃子といえば宇都宮餃子が思い浮かぶと思いますが、それ以外にも特徴的なご当地餃子が全国各地にあります。
そんなご当地餃子の特徴をご紹介しますので、ぜひご自宅でも再現を試みてください。

浜松餃子

毎年、宇都宮市と餃子消費量日本一を争うことで餃子の町として一躍メジャーな存在になってきた浜松市。浜松市には餃子店が300店舗以上あるとされています。
浜松は元々養豚が盛んであったこと、またお隣愛知県渥美半島でキャベツに一大産地があったことなど、餃子を作るための材料が手に入りやすいという利点があり、戦後浜松駅周辺には多くの餃子の屋台が出店されました。
中でも浜松餃子の元祖と言われているのが昭和28年創業の「石松」です。浜松餃子の特徴とされている円盤型の盛り付けに茹でもやしを添えるスタイルを生み出したお店です。
キャベツをたっぷり使った餡を薄めの皮で包んだ餃子をフライパンで円盤形に焼きます。この円盤状に盛り付けられた餃子の真ん中にできた穴を埋めるために茹でもやしを添えるようになったのが始まりとのこと。「石松」ではほうれん草やキャベツも試したらしいのですが、もやしが餃子の口直しに最適だったということで、もやしが定着しました。
実際に餃子ともやしを交互に食べていくと無限に餃子が食べられるような感覚になりますので、ぜひご自宅でも試してみてください。


広島餃子

広島というとお好み焼きや牡蠣のイメージが強いですが、実は特徴的な餃子を出すお店が集結しているご当地餃子の町でもあります。 「餃子センター」や「清ちゃん」など広島の老舗餃子専門店の多くは流川周辺の歓楽街の中にあって夕方からの営業が基本です。お仕事帰りの軽く一杯だったり、本格的に飲みに行く前の腹ごなしだったりに餃子屋さんが使われているようです。
そんな広島餃子の特長は青ねぎ。お好み焼きの上にもドサッと掛かっているあの青ねぎです。餡にキャベツや白菜の代わりに細かく刻まれた青ねぎが使われます。青ねぎの辛味と甘味がとても印象にのこります。
この青ねぎ餃子をラードで揚げ焼き状に仕上げるのも広島餃子の特長です。これによってラードのコクが餃子の焼き目に移って味に深みが出ます。この焼き方は家庭では難しいと思うのでゴマ油などで代用しても良いと思います。
サクッと揚げ焼きにした広島餃子には専用のタレがあります。なんとここでも青ねぎが登場するのです。小口切りにした青ねぎを薬味として酢醤油にどっさりと投入するとタレの完成。青ねぎと一緒に餃子を食べると、辛味と爽やかな香りで箸が一層進みます。
広島餃子のタレはご自宅でも簡単に再現できますので、まずは青ねぎダレから試してみてください。



博多餃子

博多というと博多ラーメンに水炊き、もつ鍋、最近では博多うどん等も名物料理として全国的な知名度を誇っていますが、実は特徴的な餃子を出すご当地餃子の町でもあります。
博多の夜の町を歩くと餃子を出す屋台や餃子専門店など餃子を酒の肴として出すお店が多数見つかります。酒の肴ということでどのお店の餃子も小さめに作られているいわゆる「ひとくち餃子」です。
この博多ひとくち餃子の老舗店として昭和24年創業の「宝雲亭」を初めとして「馬上荘」「テムジン」等があげられるのですが、これらのお店で出される餃子には餡の材料に共通点があります。
一つ目の共通点は牛肉です。一般的に餃子の具材には豚の挽肉が使われる事が多いと思いますが、博多ひとくち餃子では牛挽肉もしくは牛と豚の合挽肉が使われます。二つ目の共通点はキャベツの代わりに玉ねぎを使うという点。博多ひとくち餃子も戦後まもなく生まれたとされていますが、当時この地域では牛肉や玉ねぎが手に入りやすかったのかもしれません。
牛肉と玉ねぎを使った餡は、コクと甘みに強い特徴的な風味に仕上がります。ご自宅で餃子を作る際にも牛肉と玉ねぎを使ってみてはいかがでしょうか。



塚田 亮一(「東京餃子通信」の編集長)
2010年開設の餃子専門ブログ「東京餃子通信」編集長。
「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも。首都圏はもとより、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。
これまで食べ歩いた餃子店の数は1000店以上。
長年の研究からたどり着いた手作り餃子も評判。また、趣味のマラソンを活かし、餃子専門店を走って巡る「餃子マラニック」を主催。
作って、食べて、走れる、餃界のオールラウンダー。(「食べあるキング」より引用)