ミルミョン(밀면)

朝鮮半島南端の港町、釜山(プサン:부산)。

1950~53年にかけて朝鮮軍(北)と韓国軍(南)が熾烈な戦火を交えた朝鮮戦争では、戦線が朝鮮半島を南下・北上しては国土・国民もろとも甚大な犠牲と損失を出しました。釜山には開戦直後から韓国大統領府などの政府機関が避難してきて約3年間、臨時首都となりました。そして釜山には朝鮮半島全土から多くの避難民が押し寄せ、生活の拠り所として独特の避難民文化が形成されたといわれます。

そんな時代背景の中、釜山に生まれた食べものにミルミョン(밀면)があります。ミルミョンは冷麺(ネンミョン:냉면)に似た冷たい麺料理で、ミル(밀)は小麦、ミョン(면)は麺を意味します。

ミルミョン(밀면)
ミルミョン(밀면)

冷麺はもともと朝鮮半島の北部、特に平壌ピョンヤン地方と咸興ハムフン地方の名物料理でしたが、朝鮮戦争中に北部から避難してきた人々によって南部に伝わり現在に至っています。もともと冷麺の麺は蕎麦粉や芋澱粉が主材料でしたが、それらが当時の避難先では手に入らず、代わりに米軍がもたらした小麦粉で作ったことから、ミルミョンと呼ばれるようになりました。

ミルミョンは一見、ムルネンミョン(물냉면)すなわち平壌名物の汁冷麺と似ていますが、麺の主材料が小麦粉であること、タデギ(다데기)と呼ばれる薬味をたっぷりのせること、豚骨や豚肉を漢方薬材とともに茹でて汁や具に使うことなどが、ミルミョンならではの特徴といえます。豚の茹で汁は独特の臭みがあるため本来冷たい汁には向きませんが、漢方薬材とともに煮込んだり、タデギをたっぷりかけて食べるなど、臭みを感じさせない工夫がなされています。そして近年は豚以外にも牛や鶏を使うことが増えているようです。

タデギをたっぷりかけて食べるミルミョン
タデギをたっぷりかけて食べるミルミョン

また、どちらかというと高級感のある冷麺に対し、ミルミョンは庶民向きの卑近な食べものというイメージがあり、価格も冷麺より安価になっています。

一般にミルミョンといえば汁のたっぷり入ったタイプをさしますが、冷麺にムルネンミョン(물냉면:さっぱり爽やかな味の汁冷麺)とピビムネンミョン(비빔냉면:濃厚な薬味だれで和える汁なし冷麺)があるように、ミルミョンにもムルミルミョン(물밀면)とピビムミルミョン(비빔밀면)の2種類があります。

ムルネンミョン
ムルネンミョン(물냉면:さっぱり爽やかな味の汁冷麺)
ピビムネンミョン
ピビムネンミョン(비빔냉면:濃厚な薬味だれで和える汁なし冷麺)
薬念研究所HP:キーワードで見る食文化2026年7月「ミルミョン(밀면)」より転載