朝鮮半島には古くから「スンデ」(순대)と呼ばれる、肉食文化を象徴するような腸詰があります。スンデのルーツを遡ると、高麗時代(918~1392)に北方からのモンゴル軍侵入とともに伝わったモンゴル式腸詰という説が有力なようです。
朝鮮半島のスンデは、豚の腸(大腸・小腸)に豚の鮮血、もち米、豚の正肉以外の肉片のミンチ、春雨、もやし、薬味香辛料などを混ぜ合わせて詰め、茹でるか蒸して固めた「ブラッドソーセージ」(血液を入れて作った腸詰)の一種です。入れる材料は地方により、店により違いますが、血液を入れることと、穀物を入れること(余分な水分を吸収するため)、香辛料を多用すること(においを消すため)が、共通点として挙げられます。
豚の小腸に詰めるか大腸に詰めるかで、細いスンデと太いスンデに分かれます。また今の韓国ではあまりないようですが、かつては牛や犬、熊の腸や血液、肉片でもスンデを作っていたという記録があります。

スンデはまた、栄養的に大変優れていることも特筆すべき点です。主材料が血液であるだけに、タンパク質はもちろん、鉄分、亜鉛、セレンなどの無機質やビタミンが豊富に含まれます。
このように、スンデは動物の正肉ではなく血と内臓類、表皮など、一見グロテスクで食べにくい半端な部位を余すところなく上手に使いこなし、素材の持つ栄養的価値を生かして美味しく仕上げた、極めて知恵深い庶民的な加工食品といえましょう。
日本ではあまり目にすることがないスンデですが、韓国のスーパーでは、茹でて適当な長さにカットされたスンデが真空パックになって売られています。また在来市場に行けば、大釜にスンデがとぐろを巻くように茹で上がっているのを目にすることができます。そのような店では、たいてい豚の顔肉やレバー、胃袋などもかたまりで茹でられていて、頼めばスンデの薄切りと盛り合わせで出てきて、アミの塩辛や塩をつけて食べることができます。
見た目ほどクセがなく意外にあっさりした味のスンデは、酒の肴や小腹がすいたときの間食、あるいはご飯のおかずに、地味ながら長く変わらぬ人気を保っています。近年では、小綺麗なスンデ専門の料理店も見かけるようになりました。


■ 郷土色豊かなスンデ
朝鮮半島のスンデは、地方ごとに特徴的な傾向があります。よく目にするものでは、次のような「ご当地スンデ」があります。
バイスンデ(아바이순대)
咸鏡道地方のスンデ。別名「咸鏡道スンデ」。「アバイ」は「お父さん」「おじさん」などを意味する咸鏡道の方言。豚の大腸に詰めて作り、できあがりを斜め薄切りにするため、見た目がとても大きいことからついた呼称といわれています。朝鮮戦争中(1953~55)、朝鮮半島北部から南へ避難してきてそのまま定住することになった人々が伝え、韓国でも有名になりました。

開城スンデ(개성 순대)
朝鮮半島北部、開城の名物料理。もち米は入れず、豚肉と牛肉のミンチを主に、茹でて刻んだ白菜やもやし、豆腐、アミの塩辛などを詰めた、上品な味のスンデ。
竝川スンデ(병천순대)
朝鮮半島中部、忠清南道の竝川はもともと肉加工場の多い地域で、現在では「スンデ横丁」と呼ばれるほど多くのスンデ専門店が軒を並べ、味を競っています。竝川のスンデは、白菜、キャベツなどの刻み野菜をはじめ多種類の材料がたっぷりと入っており、こってりとした味が特徴です。
済州スンデ(제주 순대)
済州島ではスンデのことをスエ(수애)といい、蕎麦の実をぎっちりと詰めるのが特徴です。
■ 魚介に詰めたスンデ
トンテ スンデ(동태순대)
スケソウダラのスンデ。トンテとは漢字で「凍太」と書き、スケソウダラの口から内臓を取り出して自然凍結させたものをさします。これに野菜やもち米、豆腐などの具を詰め、蒸して食べます。咸鏡道の海岸地帯の郷土料理ですが、朝鮮戦争で北部からの避難民が定住した江原道の束草で広まり、有名になりました。スケソウダラの高騰した現在では、あまり食べられなくなりました。
オジンンオ スンデ(오징어순대)
イカのスンデ。オジンオはイカをさします。イカの胴体にひき肉や豆腐、もやし、薬味香辛料などを詰め、蒸して作ります。できあがったら輪切りにし、チョコチュジャン(초고추장:唐辛子酢味噌)をつけて食べます。トンテスンデ同様、朝鮮半島北部海岸地帯の郷土料理だったものが、避難民により全国へ伝わったといわれます。

■ スンデを使った料理
スンデクッ(순대국, 순댓국):スンデスープ
豚骨や牛骨を煮出した白濁スープに、スンデと豚の正肉以外の各部位(胃袋、肝臓、肺、心臓、舌、顔など)の肉片を入れて煮たスープ。刻んだ葱や青唐辛子、えごまの葉などの香味野菜を仕上げに入れます。またスンデクッには、粉唐辛子に醤油、おろしにんにく、生姜、胡椒などを混ぜ合わせたタデギ(다대기)と呼ばれる薬味や、アミの塩辛、塩と粉唐辛子の混ざったもの、白菜キムチ、カットゥギ(大根の角切りキムチ)などが別皿に添えられて出てくることも多く、好みに合わせてスープに入れたり、スンデや肉片につけたり、箸休めに食べたりします。スンデクッにはご飯もついてくるため、最初はご飯とスープを別々に食べ、最後にはご飯を入れて「スンデクッパプ」(순대국밥)を楽しむこともできます。

スンデポックム(순대볶음)スンデ炒め
一口大に切ったスンデと野菜を甘辛く炒めたもの。野菜は玉ねぎ、にんじん、キャベツ、にら、青とうがらし、えごまの葉などがよく使われます。スンデは、直径の短い小腸のスンデを使ってコロコロに分厚く切ると、形が崩れずきれいに仕上がります。甘辛いヤンニョム(合わせ調味料)はコチュジャン、粉唐辛子、しょうゆ、おろしにんにく、砂糖、ごま油、えごまの粉(えごまの実を粉末にしたもの)などを混ぜ合わせて作ります。えごまの葉とえごまの粉の両方を入れることで、独特の香りとコクが出ます。また、トックッ用の餅を一緒に入れて炒めることもあり、スンデ共々、なんともいえないモチモチ感が身上です。
