韓国では秋になると、ホンシ(홍시:紅柿)といって、真っ赤な完熟の柿を街頭でよく見かけるようになります。皮はつるんとして、中がぷよぷよの柔らかい柿です。皮をむいて干した「干柿」や「あんぽ柿」ともちがうもので、日本ではこのようなよく熟れた柿をあまり見かけませんが、韓国では柿(カム:감)といえばこのホンシが一般的です。「柔らかい柿」を意味する「ヨンカム」(연감)と呼ばれることもあります。
そもそも柿には渋味成分であるタンニンが含まれており、このタンニンが水溶性(口の中で溶ける)か不溶性(溶けない)かによって、甘柿か渋柿かに分かれます。柿はどの品種も幼果のうちは水溶性タンニンを含むため渋味がありますが、甘柿の場合は、中に種が生じて熟すうちにタンニンが水溶性から不溶性に変化して渋が抜けていきます。一方、最後まで水溶性タンニンが残る品種が渋柿ですが、種が多くできると渋が抜けるものや、種の周りだけ渋が抜けるものなど、柿の品種は多岐にわたります。
完全な渋柿でなければ、完熟させることによって自然に渋が抜けていくわけですが、完全な渋柿も含めて、炭酸ガスやアルコールを使って人為的に処理することにより、一律に渋抜きすることができます。また、干柿や冷凍柿も渋抜きの一手法といえます。 韓国のホンシも、完熟させることで自然に渋が抜けたものや、人為的な処理によって渋抜きしたものがあり、後者を特に「ヨンシ」(연시:軟柿)と呼ぶこともあります。
ホンシ・ヨンシとも、渋柿を美味しく食べるために生まれた知恵の産物ですが、どちらかというと硬めが一般的な日本の柿と比べると、完熟を通り越して過熟のようにも見えます。実際、ホンシは柔らかくて保管が難しいことから、冷凍したものも多く出回っています。冷凍ホンシはそのまま、あるいは半解凍にして中をシャーベットのように食べたり、解凍してジャムやソースに加工するのが一般的な食べ方ですが、キムチのヤンニョム(薬味調味料)に加えたり、煮物や焼き物のタレに配合するなど、独特な隠し味を秘めた天然調味料としても活用されています。

韓国において、ホンシは優れた健康食品と広く認識されています。具体的な効能は次のとおりです。
このように、さまざまな健康効果のあるホンシですが、食べ過ぎるとタンニンの過剰摂取により便秘になりやすいという点だけは、注意すべきと言えましょう。
