シッケ(식혜)

シッケ(食醯)は朝鮮半島で古くから作られてきた冷たい飲みもので、主に食後やのどが渇いたときに好んで飲まれてきました。

日本の甘酒に似ていますが、麦芽で発酵させる点が異なります。

シッケ(식혜)

一般的な作り方は、もち米またはうるち米を硬めに炊くか蒸し、麦芽汁を加えて暖かいところで発酵させた後、砂糖か蜂蜜でほんのりと甘みをつけて火入れをし、冷やします。発酵時間は、温度や麦芽の質にもよりますが、数時間ほどです。発酵してぽつぽつと米粒が浮いてきたら、米粒をすくって冷水でゆすいでおき、最後に汁に浮かべます。こうすると、米粒がつぶれずに水面に浮かび、きれいな仕上がりになります。また、好みで生姜や柚子の絞り汁を少々加えたり、仕上げに松の実やなつめのせん切りを、米粒と一緒に浮かべることもあります。

シッケ作りに使われる麦芽は「ヨッキルム」(엿기름)といって、韓国料理ではコチュジャンや水飴、餅菓子などの発酵にしばしば使われる食材です。麦芽には、澱粉を糖化する酵素アミラーゼが多く含まれているので、このはたらきを発酵に利用するわけです。麦芽を布袋に入れてぬるま湯にしばらく浸けた後、もみ出してアミラーゼを溶出させた麦芽汁をとり、それを料理に使います。近年では、麦芽を粉状に粉砕した「ヨッキルムカル」が市販されているので、それを使うと麦芽汁が簡単にとれます。麦芽汁は、しばらく置いておくと濁った部分が沈殿するので、上澄みの部分だけを使うと、済んだきれいなシッケになります。

「ヨッキルム」(엿기름)



一般的なシッケではありませんが、少し変わったものに、慶尚北道の安東アンドン地方で作られてきた「安東アンドンシッケ(안동식혜)」があります。これは、もち米を麦芽で発酵させた後、大根のせん切りと粉とうがらし、生姜汁を加えて容器に詰め、再発酵させて作ります。

ところで、朝鮮半島にはもうひとつ、「シッケ」という別の食べものがあります。これは、鰈(かれい)などの魚を塩でしめ、炊いたご飯にとうがらしなどの薬味を加えて混ぜ、発酵させた貯蔵食品で、朝鮮半島最北部、咸鏡道ハムギョンド地方の郷土料理です。こちらの「シッケ」は、前述のシッケと発音はほとんど同じですが、文字では「식해」(食醢)と書いて区別します。

薬念研究所HP:キーワードで見る食文化2009年1月「シッケ(식혜)」より転載